LOTUS STUDIO BLOG
これから何が起こるか。我々は何をすればよいのか。
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これは1975年のアカデミー賞を受賞した、ドキュメンタリー映画の傑作である。日本での劇場初公開は昨年(2010年)の6月。つまり35年後であった。しかしフイルムで撮影された当時の映像は、いささかも古びてはいない。現代においてもまったく変わらぬ戦争の実態、そして戦争の背景にあるものを、鮮やかに描き出している。

だが、映画は素晴らしいが、その分、見終わったあとは、暗澹とした気持ちに襲われる。
結局、人間は、愚かなままなのか。

映画は、べトナム戦争の帰還兵や傷病兵、戦死者の家族、ジャーナリスト、軍事アナリスト、政治家などへのインタビューと、歴代大統領やべトナムの人たちのニュース映像、べトナム戦争時の実写フィルム等々を、淡々とつなぐ構成になっている。

近年における「ドキュメンタリー映画」再評価は、マイケル・ムーアの登場に負うところが大きいと思うが、あのような恣意的な編集をしていないという点から言えば、この『HEARTS AND MINDS』は、手法的には対極に位置した、完成型だとも言える。逆にいうと、マイケル・ムーアがいかに独創的であったかということでもあるし、もう「映画を観て、皆さん考えて下さいね」では済まない時代(つまり映画を武器として戦う時代)になったとも言える。

タイトルの『HEARTS AND MINDS』はジョンソン大統領(べトナム撤退を考えていたケネディが暗殺された後、その次に就任。ケネディは軍産複合体に暗殺されたという説がある)が、議会で語った演説
「米国は戦いに備えるが、勝利の行方は、現地の人々の心と意思(HEARTS AND MINDS)にかかっている」
から取られている。

一見してなんのことかよく解らないが、まさしくこのタイトルに、映画の主題が表されているように思う。
要するに、多義的な「HEARTS AND MINDS」なんだということ。

ジョンソンの言葉の「現地の人々」とは、南べトナムの人のことを差すのか、それとも北べトナムの人のことを差すのか、あるいは南北関係なくべトナム民族のことを差すのか、わからない。また、聞こえようによっては「手は出すが君たちのことなんて知らないよ」とも受け取れるし、「俺たちと同盟結ばないとヒドい目にあうぞ」という脅しにも聞こえる。
そして、これこそが、きわめてアメリカ的なレトリックでもある。

トルーマン大統領の顧問であったクラーク・クリフォードが証言する。
「第二次大戦後、軍事、経済においてソビエトを凌ぐ大国となったアメリカには、責任感とともに最強国としての自負が芽生えた。世界の未来さえも意のままに出来るのでは、と」
また、アイゼンハワー時代の国務長官であったジョン・フォスター・ダレス
「進歩という概念を、我が国のみにとどめず、世界に広めるのだ」
と議会で語った。

このアイゼンハワーとダレスが打ち立てた理論が、「共産主義のドミノ倒し論」であった。そしてその論に沿って、反共産主義政府を支援するという目的で、これ以降アメリカはべトナムに深入りしていくことになるのである。
この「共産主義のドミノ倒し論」を「大量破壊兵器」に、べトナムをイラクに置き換えれば、先のイラク戦争開戦時となんら変わりがないのだ。

そのアイゼンハワーも、1961年1月の退任演説では「アメリカは軍産複合体に操られそうになっている。国民よ、軍産複合体の動きを監視せよ」と警告したのだから、よくワケが解らない。アイゼンハワーは軍人から政治家に祭り上げられた人なのだが、なってみたら、大統領でも抗えない巨大な圧力に操られていると知って震え上がり、その実態を国民に知らせることで、反抗しようとしたのだろうか。

さて、映画はいわゆる「反戦」ではなく、多角的に描かれているので、多様な受け取り方がきっとあるだろうと思うのだが、僕がこの映画でいちばんピンときたのは、「アメリカン・フットボール」シーンであった。
アメリカ人のメンタリティーって、結局、「アメリカン・フットボール」に集約されているんだ、と気づいたのだ。
なぜ、アメリカ人に、あのゲームがそれほど人気があるのか? 今まで、全然解らなかった。

しかし映画を観て解った。「アメリカン・フットボール」というゲームは、軍事作戦そのものなのである。
相手の戦略を予測しながら、攻撃側はある地点まで進む。そしていったん休んで、状況を把握したのち、次の作戦を考えて実施する。こうして、相手陣地まで攻め続けて行く。それが「アメリカン・フットボール」であった。早い話が軍事ゲームなのである。
そして、チア・リーダーは戦意高揚を煽るメディアなのであった。

そう言えば、ロバート・アルトマンの傑作『MASH』では、朝鮮戦争の前線基地で、「アメリカン・フットボール」を競う場面が出て来るのである。その意味が解った。前線で戦っていることも、「アメリカン・フットボール」に興じている事も、大した違いじゃないという、アルトマンの風刺であった。

1月30日(日)午後4時 NHK BShi で再放送があるので、ぜひご覧いただきたい。絶対に損はさせません。
監督・製作は、ピーター・デイヴィス。
再放送の案内はこちら↓
http://www.nhk.or.jp/frontier/index2.html

映画の詳細につては、次に詳しく出ている↓
http://www.excite.co.jp/ism/concierge/rid_17722/pid_1.html
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