LOTUS STUDIO BLOG
これから何が起こるか。我々は何をすればよいのか。
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衆議院が解散した。麻生総理は次の選挙を『安心社会実現選挙』と命名、「国民に問うのは政党の責任力。景気回復を実現するまで総理・総裁の任務を投げ出さない。約束ができなければ責任をとる」とカメラの前で言明した。

『安心社会実現選挙』とはどういう意味だろう。<これからの社会は安心が重要。だからその安心を実現してくれる政党を選びましょうよ。>ということか?
自分には、麻生さんが語るこのいつもの言い回しがどうしても理解できない。安心が重要なのは、今の社会が不安で満ち溢れているからだろう。そこまではいい。ではそのような社会を創ったのはいったい誰なんだ。今の政府、自民党ではないか。

「景気回復最優先」と言い、自民党でなければ、私でなければそれが達成できない。景気回復を実現するまで総理・総裁の任務を投げ出さない、と言うが、今の未曾有の経済危機を招いたのはいったい誰なんだ。今の政府、自民党ではないか。

「政党の責任力」と言う。では問うが、あんなに大騒ぎして実行した「定額給付金」の景気浮揚効果については、一言もないじゃないか。公明党肝いりの景気浮揚策じゃなかったのか? それで「政党の責任力」とか言われてもなぁ。いまだにマニフェストもなしで、「約束ができなければ責任をとる」と言われたって、それじゃあ判断の仕様がないじゃないか。

いま、庶民の生活はボロボロのガタガタだ。だがそうなったのはいったい何故なんだ? 広い意味で言えば「それまでの政治」に原因があったからじゃないか? 今は景気が悪いから、「景気回復最優先」と言えば聞こえはいいのかもしれない。でも、実はとんでもないゴマカシがそこにはある。それをこれからしっかり検証していこうと思う。

先ず私からみなさんに問いたいのは、「景気がいいと、なぜいいのか」と言うことだ。

「ねえ、景気がいいと、どうしていいの?」
「そんなこたぁ決まってらぁ。昔から景気がいいってのは、いいんでぇ」
「だからどうして? 何がいいの?」
「暮らし向きがよくなるじゃねぇか?」
「暮らし向きって?」
「景気がよくなりゃ、実入りが増えるからよ。余裕ができるし、それでいろんなものが買えるだろ?」
「本当?」
「本当、とはどういうことでぇ?」
「平成景気のときに、あなたはよくなったの?」
「なってねぇよ。バカ、だからこうして困ってんじゃねぇか」


先ず【図1】を見ていただきたい。これは、名目GDPと平均給与との関係を見たものだ。(解りやすいように、その時の政権の首相名を付けておいたからね)さあ、小泉政権になって2年目の平成15年からGTPが上昇を始めるよ。ところが平均給与はその後どんどん下がっていくのだ。解るだろ? つまり、<景気がよくなると、暮らしもよくなるは真っ赤な嘘>だということ。

図1

「えっ! どうりで。いや俺もなんか変だなとは思ってたんだ。ホリエモンだ、村上ファンドだって世間が浮かれてたときにもよ。おれっちの生活はどんどん苦しくなって行くばかりでよ。なんだ、そうだったのかい」

そう。景気が浮揚すると国民全部が豊かになるというのは、高度成長期の幻影なんだよ。そんな時代はもうとっくに終わっているのさ。
今は、
<景気上昇で、利益を得る人と、得られない人がいる>
という社会になっているんだよ。さらに言えば、ここにはもっと深い意味がある。
<景気上昇で利益を得る人は、得られない人を【故意に】犠牲にすることによって利益を得ている>

「えっ、なんだって? そ、それって左翼がよく言う、『搾取』ってやつじゃねぇのか?」
「そうだよ」
「あっさり言うねえ」
「あとね、このグラフで注目しておいて欲しいのは、麻生太郎のところ」
「ああ、GDPがドーンと下がってる。なにかい? GDPってのはグレートどぽーんの略かい?」
「でしょう? これが後々歴史に記録される事実なんだよ。麻生政権ではGDPの最大の下落率を記録した。だからその人物が『民主党に任せていたら景気回復は覚束ない』なんて言うのは、滑稽以外の何者でもないよね」
「まったくだ。じゃあ聞くけどよ、利益を得る人って誰なんだい?」
「投資家と一部の経営者かな」
「損する人は?」
「労働者」


では【図2】をご覧いただきたい。これは非正規雇用者の割合を表したものだが、グローバリズムが進展し始めた平成6年位から一貫して割合が上昇し、今は労働者の1/3を占めるに至っている。更に【図3】を見て欲しい。日本のパートタイマーの賃金がいかに抑えられているかということを。【図4】は、完全失業率とGDPの関係を見たものだが、村山富市内閣前までは2%台だった失業率は、小泉改革後の景気上昇期には4~5%台で推移しているのだ。景気が上がったのに失業者も増える。これが、小泉時代の「好景気」の背景なのだ。

図2
図3
図4

もっと衝撃的なデータもある。【図5】は、完全失業率と自殺者率の関係を見たものだが、明らかな相関が見られる。平成10年以降、自殺者は3万人に急に膨れ上がりそれ以降も3万人超で推移している。この自殺者急増の背景を見ると、内訳には無業者や非正規雇用者が急増しており、自殺理由の中身も「経済・生活問題」が大きく関わって来ているのだ。

図5

さらに【図6】を見ていただこう。小泉政権になった翌年の平成14年からニート率が急上昇している。先の自殺率の上昇は30代の増加が顕著だったが、フリーターやニートの増加にも見られるように、雇用問題は高齢者だけでなく若者にも大きな影響を与えた。こうした雇用が不安定な社会構造は、結果として若者に「先の見えない自分、夢の持てない日本国」を提示することになったのだ。

図6

「ってことはよ。俺たちは、『景気』って言葉に騙されていたってことなのかい?」
「うん、まあ。小泉さんのときの『改革』って言葉と一緒だね」
「でも、ここまでひどくちゃよ、どうにもなんねぇよ。やっぱ、景気は上がってもらわねぇとな。おまんまが喰えねぇしよ、女房子供養えねぇよ」
「解るよ、そりゃ。ところがね、ここまで酷くしたのは、実は『麻生さんの言葉による風評被害』って面が大有りなんだ」
「え、そりゃ、どういうことでぇ」
「リーマンショックの直後、麻生さんは『わが国は、先進国の中でも影響は軽微』だって、大外れの見通しをしていたことは覚えてる?」
「う~ん、そんなこと言ってたっけ?」
「なんだ、忘れちゃったの? まあとにかくそう言ってたんだけど、その後、先進国の中では最悪の実体経済という状態になっちゃった」
「なんでよ?」
「麻生さんが『景気回復最優先』を言い過ぎたからさ」
「あー、解んねぇ」


【図7】を見ていただきたい。これは経団連会長の御手洗さんの会社、キヤノンの売上高と、名目GDPを前年比伸び率で比較したものだ。このグラフを見ると、即座に次の二つのことが判るだろう。

図7

(1)キヤノンの売上高と、日本の名目GDPには相関がある。
(2)しかしキヤノンの売上高の上下の方が、GDPの上下よりも大きく振れている。

先ず(1)は、日本の輸出関連企業の業績がGDPの上下に影響を与えているということを示している。これは実は因果関係が逆で、日本のGDPを押し上げるために(つまりは経済成長を達成するために)この時期、輸出頼みだったということである。内需が頭打ちなので、そっちには目をくれず、政府は輸出で成長を達成しようとしたのだ。

次に(2)は、影響があるといっても、GDP全体から見ればわずかである、ということを同時に示している。
これは前回にも書いたが、日本のGDPに占める「輸出」の割合は16.3%。さらに耐久消費財(自動車や家電品)が占める割合は、GDP比率で見るとほんの3.3%に過ぎない。
また、輸出入合わせた貿易総額はGDPの3割弱である。つまり、日本の景気は、実は「外需」ではなく「内需」の動向が鍵を握っていたのである。

「今、不景気だ、不景気だって言うけどさ、なんで不景気だと思う?」
「そりゃ、物が売れねぇからだろ?」
「まあ、そりゃそうなんだけどさ、逆から見たらそれってどういうことになる?」
「逆って?」
「つまり、買う側」
「買わねぇってことだろ?」
「どうして?」
「生活が苦しいからだよ」
「どうして苦しいの?」
「給料は増えねぇし、いつクビ切られるかも分らねぇからだよ」
「でしょう? つまり未来に希望が見えないからだよね?」


小泉政権下の景気上昇は、正規雇用を減らし、賃金をカットすることで達成してきたものだ。だがその雇用者は、回りまわって次の「購買者」となる。その「購買者」に将来の生活不安があるから、GDPの多くを占める「内需」が急速に縮こまってしまったのだ。
「外需」にしか目を向けていなかった麻生政権ならびに自民党にはこの理屈が解っていない。いや、解っているのかも知れないが、故意に目くらましをしているのかも知れない。

経済の第一歩は「お金を手放すこと」だと言われる。ところが国民の大部分が将来不安から節約に走っているため、お金が回らない状況になってしまったのだ。なぜか? 麻生さんが将来不安を煽ったからだ。日本のGDPの多くが実は「内需」だということをきちっと説明して、「アメリカ経済崩壊で日本の輸出産業には大きな影響があるだろうが、内需でしっかりそこをカバーしていこうよ」と言えばよかった。

ところが「100年に一度」とか、「景気回復最優先」を旗印に、それを連呼するものだから、輸出産業とは関係のない国内産業に従事する者たちまでが、「もしかしたら大変なことになるかもしれない」と不安に駆られて、一斉に財布の紐をギュッと締めてしまったのだ。そして、「内需」については、愚にもつかない「定額給付金」のバラまきをやった。1万2千円を貰っても、それで「将来不安」が消えるわけではないから、「内需」回復には程遠い。

リーマンショックの直後、麻生さんが「日本は先進国の中では傷が浅い」と言ったのは、金融のことを言っていった。不良債権の額はそれほど多くはない、と思ったのだ。しかしアメリカ経済が沈んだことで、アメリカ向け輸出が激減してしまった。だがそれとて、日本経済全体の中では、ある一部のこととしてそこで止めておくことが出来た筈だ。

しかし、日常的にスーパーマーケットに行ったり、ファッションを買ったりしたことがない国会議員の先生方やお役人さんたちは、ミクロの実体経済(つまり普通に物を売ったり、買ったり)が、感覚的にまるで解っていない。だから、いちばんパイの大きい「内需」に関しては放ったらかしにして、大企業向けに「景気回復最優先」を口走るだけだったのだ。つまり、今の大不況は、『麻生さんの言葉による風評被害』の影響が非常に大きい、と私は見ている。

「なるほどね。歴代の自民党政権が、雇用不安を増大させていったから、今俺たちがこうなっているってわけか」
「それだけじゃないよ。医療だって、介護だって、年金だって、教育の問題にしたって、みんなその根っこには、<雇用不安がなく、継続して賃金が得られる>というベースがあるからこそ、成り立つことなんだよ。その根っこを、先ず崩壊させたのが自民党政治なのさ」
「なんだ、なんだ。『安心社会実現選挙』って、あいつらまったく逆をつくってきたんじゃねぇか。その反省が全然ないのかよ」
「グローバリズムが入ってきて、『企業は誰のものか?』なんてバカな議論があったでしょう? あれだって、雇用を流動化させて、株主に利益がもっといくようにさせるための、投資家と経営者の作戦だったんだよ」
「ひでーなぁ。だけどよ、俺が解らねぇのは、なんで有効な策もねぇのに『景気回復最優先』って、麻生太郎はずーっと言い続けてんだよ?」
「もう一人いるだろ? おんなじことばっかり言ってる人」
「誰でぇ?」
経団連会長の御手洗さん。だから、あれは経済界へのリップサービスなんだ」
「えっ! 俺たち庶民に対してじゃないの?」
「違う。今までも説明したように、今の経済界や自民党政治のやり方では、景気がよくなると、逆に庶民の生活は苦しくなるんだ」
「そんなバカな!」
「バカなって、もう結果がいろんなところに出てるじゃないか? もうこれ以上苦しみたくはないだろ?」
「そうだけど、なんで自民党は俺たちの方を見ようとしないんだ?」
「あなたは献金してる?」
「するわけねぇ」
「だからだよ。自民党に献金してるのは企業なんだ。だから、その人たちに利益があるように政治を誘導していくんだ」
「嘘だろ? なあ、嘘って言ってくれよ。そんなふざけた政治があるけぇ」
「‥‥‥」


今や「誰にでも利益があること」はあり得ない。あちら立てればこちらが沈むという世の中なのだ。例えば、医療費抑制を叫んだところで、政権与党のバックに医師会がついていれば、それに反対するのは目に見えている。日本の政党は自分たちがどういうグループの利益を代表しているということを明確にしないし、公約も実現されたかを検証しようともしない。それが当たり前で来ている。しかしもうそれではダメなんだ。

8月の選挙では自民党は惨敗するだろう。だがそれは始まりだ。自民党の中にもいろんな立場の人がいるし、民主党の中にだっていろんな立場の人がいる。だから、カラクリが見えにくい今の政治状況から、もっと解りやすい特定の利益グループに沿うように、やがて調整(政界再編)が起こるだろう。

しかしそれとて、人間が未熟だから起こる過渡期の現象なんだと思う。本当は、特定の「利益」などといったことを考えない世の中にしていかないと、いけないんだと思う。
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